無題

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「絵画の中の素描」という言葉は、ジャクソン・ポロックの成熟期の作を説明するために使われたが、1970年のトウオンブリーによる、この大きな無題の抽象画を正確にあらわしている。個人的な様式によって、トウオンブリーは素描の方法と技法を、この場合にはクレヨンを力リグラフィーの手法で用いて、絵をかいたカンヴァスの表面に移した。ポロックとは異なり、トウオンブリーは、書くことと類似の動きで色彩を表面に直接置くことによって創作過程の統制を維持している。走り書きのようにみえるが、彼の表現上の身振りは非常に秩序だっている。ゆるく巻いた線の平行な帯における大きさと色の段階づけは、動きの感党を創り出し、深さを暗示する。これはトウオンブリーの晩年の作品のうち特に優れた作例である。