背後の壁の軽々とした装飾なども本作の大きな魅力である

   特にこの失名の女性(本作のモデル)が見せる未処理の脇や露わになる両乳房などのあからさまな官能性、向けられる視線に全く反応せず己の身支度に没頭するこの女性の日常的瞬間を垣間見るかのような親密性は、女性の身体特有の柔らかな形態と呼応するかのように美しく、観る者へと迫ってくる。

 

   また輝きを帯びたかのような白く健康的な肌の質感や、流々とした筆触による繊細な光と陰影の描写、画面の左右で明確に分けられる明暗の対比、女性の下半身や背後に掛けられる青白い布の大胆かつ表情豊かな表現、背後の壁の軽々とした装飾なども本作の大きな魅力である。

 

  なお本作の制作年代については不明であるものの、1875年には売却された記録が残されている点や、ルノワールの表現・様式的特徴も考慮し、一般的には1873年から1875年頃に制作されたと考えられている。

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