ゴッホはパリ滞在時に複数(5点)本画題を手がけたことが知られている

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 本作は印象派の登場以降、絵画芸術の先端を進んでいたでパリへ、ゴッホが絵画を学ぶ為に訪れた1886年の夏頃(又は後半頃)に制作されたと推測される作品で、荒々しく大胆な筆触ながら、皮が剥げ擦り切れた古びた靴の草臥れた状態や、過酷な状況下で使用され続けたことを容易に想像させる様子は、ほぼ的確にその形態が捉えられており、画家の描く対象(本作では靴)に対する写実的姿勢が明確に示されている。

 

 本作以降も、1886年末頃には『3足の靴』が、さらに1887年初頭~中頃には(本作と同名称となる)『1足の靴(古靴)』が制作されており、ゴッホはパリ滞在時に複数(5点)本画題を手がけたことが知られている。ここで注目すべきは、バルビゾン派の画家ミレーの抑制的な色彩と、19世紀フランスの画家アドルフ・モンティセリの影響を感じさせる写実的対象表現の変化にある。